初めてアイツと会ったのは、オレが四つの時。
親父に呼ばれ、客間に行けば、アイツはいた。

オレ達に気が付いて、ゆっくりと振り向けば、しっかりと目を見つめられ。
フッと微笑んだ。

その時のオレは、まだまだ小さくて…。
初めて出会ったアイツに。
ただただ、気恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。









それから数年…―――
オレは、小さいながらも熊野の後継ぎという立場にあり、世間に名を知られるようになる。


その頃から、オレの周りには…女が居た。
そして、その目は好機の色を宿し取り巻く。
オレが、一声掛ければ誰もが着いてきた。


その度に募る。



「詰まらない」



という、思い。
オレは、この時からその行為に『何』を見出だそうとしているのか、と考えるようになったけれど。

また、数年も経てば。
その「感情」も消えてなくなり。
《それ》を遊びの一つだと考えた。


そう考える事で、オレの中にあった妙な引っ掛かりをなくしたかったのかもしれない…。














「ヒノエ」

呼び掛けられる、名。
偽りの、名。

それを呼ぶのは、男の癖に少し高い、声。


良く知っていた、声だ。




だけれど、それは微塵も感じさせない、低く囁くように呼ぶ、声。

オレの後ろ姿に、声をかけられた。


だけど、振り向く気には、ならなかった…。
否。振り向いた後、自分が保てられるか、解らなかったからだ。

何か、何か…解らない、気配を感じ取ったから。



感じ、取ってしまったから…。





あの、声に。

あの、向けられる瞳の色に。




恐怖、さえ……覚えた。。。







「ヒノエ…」




「近寄んなっ!!アンタなんか…嫌いだっっ!!」





床に押し付けられる両の手。

唇に残る、感触。



頬を伝う、涙。





「解りました…」





呟いた、その声は悲しみの色。

オレの心の中は、めちゃくちゃで。


退いていく、体温と。
退いていく、アイツの足音。

襖の閉じる音と共に、静まり返るオレの部屋。


一人取り残された、見知ったオレの部屋が嫌に大きく見えたのは…どうしてだろう…?






「なん、なんだよっっ……!!」







ダンッ!!―――――




床を殴った、その拳がじんわりと痛かった。










それから、余り会う事もなくなって数年が過ぎた…。




「〜♪…へぇ。龍神の神子か…」


龍神の神子が、現れたという情報をオレの烏がもって帰ってきた。
どうやら、熊野入りをしたらしく、表情が笑みにかわった。

「ふふ…丁重にお招きしてやらないと…」

















ガサッ…――――



「何者だっ!?」

長髪の男が、龍神の神子と思わしき姫君の前に立ちはだかる。
だけど、この際。野郎は無視だ。
男の横を通り過ぎる時、呼び止められた気もするが、まぁ、たいした事じゃないから聞かなくてもいいだろう。
真っすぐに、目の前で戸惑っている姫君ににこりと微笑んで、彼女の手をとった。

「初めまして、姫君」

そう言えば、頬を朱に染める姫君の瞳とかち合って。
素早く俯いた姫君の、その後ろに…アイツの姿を見付けた。





………………!??





何故、なんだ…?

心が、揺れる…上手く、いかない……!?



「それ位にしたらどうですか…ヒノエ?」





オレに、そう問い掛ける、その声が…。







『解りました…』








あの時のアイツを思い起こされて、胸が何かに縛られるかのように苦しい。



これも、『運命』と言うのだろうか…?

オレが「八葉」の一人という事実。
そして、対の「八葉」がアイツ……



弁慶、だという事…―――――











オレの瞳に映る、満月。
いつかのあの日も、こんな日だった。

自室で、ぼんやり月見酒を楽しんでいた、そんな時にアイツはやってきたんだ…。



「誰だい?気配を消そうとしたって無駄だよ」


そう…こんな風に。
足音を忍ばせてやってきたんだ。





解っていたのに…―――







オレは、相当の馬鹿なのかもしれないね。


溜め息と共に、苦笑を溢した。





「賢い、そう思ってはいたけれど…僕の思い過しだったのかな…?」

「さぁな…だけれど……嬉しくないね、夜な夜なやってくるのは…姫君と相場が決まっているのに…」
「ふふ…でしょうね。でも、残念でしたね…望美さんはとても賢い御方ですから…」

スッ、と顔の横に手を伸ばされ壁に挟まれる形になる。
次には、視線を捕らえられた。

「君の、色香に気付かない…」

逆だろ?と言いたいのに言えないのは、こいつの無言の圧力からだろうか…?
それとも、自分自身…こいつに何を言っても無理なのだと割り切ったからなのだろうか……。

それは、解らないけれど…一つだけ解った事。。。



何故、この状況だというのに冷静でいられるのか、という事実。






「ヒノエ…僕は……」








「アナタを…諦めるつもりはありませんよ…?」








そう、耳につく。アイツの言の葉。
近づいてくる、吐息に。


オレは、ゆっくりと眼を閉じた…―――――









― 月 ―










月だけは知っている、、、

秘密の………



      『逢瀬』――――――――















後書き
久々過ぎて、小説の書き方忘れた翠蓮です!!(ぉ)
ここまで読んで下さった皆様に感謝!詰まらないものになってしまった事に申し訳なく思っております…(汗)
つか、ヒノエがヒノエじゃなくてごめんなさぃ!
勉強しなおします〜(汗)

では☆



執筆者・翠蓮 06.10.18